公開日 2017年11月18日(Sat)
11月18日(土)指宿商業高校創立70周年記念式典がありました。前日に肝付町に戻っていたので,そこから桜島を経由して錦江湾をぐるりと指宿へ向かいました。山川フェリーが利用できれば,便利なのですが,根占発の始発が9時なので,式典に間に合いません。朝から雨降りで,午前中は終始雨に祟られました。でも,お陰で当初予想されていたよりも,気温は随分高くなりました。数日前の天気予報の混乱ぶりは何だったのでしょう。指宿商業は,指商デパートや株式会社指宿商業で県内は言うまでもなく全国に名の轟く名門校です。錦江湾にそれこそ接するように位置しており,校庭のすぐ横は海です。高原の避暑地福山高校とは対照的な立地条件です。海岸線は格好の散歩やランニングのコースになりそうです。創立70周年記念式典には鹿児島県下の各高校の関係者が多数出席しておられました。次第に雨は小降りになりつつありましたが,式典の後車で再び桜島を目指す際にも,車のワイパーは時折使わざるを得ませんでした。桜島フェリーでかつてお世話になった懐かしい,あの頃と異なり麺が幾分平たくはなっているけれども同じように腰のない,大好きなうどんをすすった後,フェリーの外に車を出すと眩しい日差しが襲ってきました。天気予報通り,午後からはぽかぽか陽気の暖かい天気になりそうです。
車とフェリーで片道2時間半の長旅だったお陰で,車の中でCDを4枚も聴くことができました。マルタ・アルゲリッチが毎年出してくれるスイス南部のルガーノで開かれる音楽祭のライヴ録音です。アルゲリッチ本人だけでなく,ピアニストを含めて多彩な演奏家が登場し,様々なレパートリーを,殆どCDで聴いたことがないような作品まで演奏してくれるのがこの音楽祭の魅力です。3枚組で毎年発売されますが,2015年の3枚を聴き終わり,帰りのフェリーを降りる際に,4枚目のCD,つまり2016年の1枚目に針を落とすと(もちろん言葉の綾,本当は車に備え付けのCDプレーヤー),いきなりラヴェルの「夜のガスパール」が流れてきました。ふと学生時代この音楽が嫌い,というより苦手だったことが思い出されました。3曲からなる音楽の1曲目「オンディーヌ(水の精)」には何とか付いていくことができたのですが,2曲目の「絞首台」になるといけません。おそらく左手の単純なリズムが絞首台の巨大な刃が落ちてくるのに怯える被処刑者の強迫観念を表し,それに対して様々な想念が去来し,乱れ揺れ動く心を右手の不思議な旋律が表しているように思われて,ひどく居心地の悪い思いをしたものです。茫洋としたおどろおどろした世界は,3曲目の「スカルボ(妖怪か何かの名前)」でも続きます。19世紀末に流行った怪奇趣味のベルトランの詩をラヴェルがピアノ曲にしたものです。ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ音楽の輪郭のはっきりとした音楽の方に惹かれていたせいでしょう,しばらく掴みどころのないフランス音楽は苦手でした。ところが,知人の一人がラヴェルのピアノ組曲「鏡」の中の「蛾」,夜のガスパールと同系統の作品です,それが美しいと言うものですから,こちらは心穏やかではありません。どこが美しいのだろうと不思議に思いながら,何度も何度もラヴェルの作品を繰り返し聴いたのでした。すると,ドビュッシーやラヴェルなどの特に印象派と呼ばれるぼんやり(?)した音楽がいつの間にか大切なものになっていました。久しぶりにアルゲリッチの「夜のガスパール」を聴いて,もう70歳を過ぎたと思われるのですが,全く衰えを知らない見事な指の動きに驚愕するとともに,「夜のガスパール」の神秘的な世界の美しさ(!)に魅了されてしまいました。
明日は2年商業科の生徒会長でもある神ノ門佳音君(国分南中出身)と3年商業科の八木皓大君(牧之原中出身)の2人が日商簿記検定に挑戦します。今頃は一生懸命勉強中でしょう。2人の健闘を祈りたいと思います。