公開日 2018年02月24日(Sat)
2月24日(土)少しずつ寒さも和らいできて,春の足音が聞こえてくるようです。これは数週間前に用意してあった書き出しで,実際には霜が降って畑一面うっすらと白く薄化粧しています。でも,気温の方は確実に高くなりつつあるように思われます。さすがに氷点下ということはなくなりました。春の足音は,もうしばらく待たないと聞かれそうにありませんが,少しずつ春は近づいているはずです。庭の梅の木では鶯が囀っています。大分上手になりました。これが春の足音なのでしょう。
『老犬コロの繰り言その80』です。老犬は高齢のせいもあるのか,私の車に轢かれた影響もあるのか,若い頃みたいに犬らしく「ワンワン」とは鳴きません。他所の人が来たときは,それらしく鳴こうとすることはありますが,辛うじて犬の鳴き声であることが分かる程度です。普段は,散歩に出かけるときや餌を貰うときぐらいしか声を出しませんが,人間の幼い子どもが駄々をこねているような声です。およそ犬の声とは思えません。一日の大部分は黙って沈黙を守り通しています・・・。
老犬コロの繰り言その80 |
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垣内春さんは,聡明な方ではあったけれども,明るく陽気な面もあり,よく冗談も飛ばされたようじゃ。隣近所との交際も積極的で,隣のアパートに東京から引っ越して来られた若い夫婦がおられたそうじゃ。そこの奥様が,春さんを通じて冷蔵庫を動かす手伝いを旦那に頼まれたことがあった。春さんの依頼とあっては,おいそれと断るわけにはいかない。むしろ,旦那は喜んでお手伝いをすることにしたのじゃ。お隣のアパートの1階を訪ねると,まだ十分にきれいな冷蔵庫を持って行って欲しいと言われた。つまり,ただでやるから持って行けということだったのじゃ。何だ,春さんとお隣の奥さんの間では最初からそういう話になっておったのじゃ。新しい大きな冷蔵庫を買ったから,古い方は隣の貧しい下宿人つまり旦那にやろうということじゃ。古いと言っても,2ドアで多少小さいけれども,当時流行っていたドアを開けずに飲み物が飲めるサーバーみたいなやつが付いておったらしい。手入れが面倒で不衛生だからか,最近では全く見なくなっておるが,旦那は特に夏場は随分重宝したようじゃ。旦那のことだから,ろくに手入れもせずに汚れたまま使っておったのじゃろうと思う。じゃが,田舎の山の中で育った旦那の胃袋は丈夫じゃから,そう簡単に音を上げることはなかったのじゃ。多少黴菌が入っとるぐらいがちょうど良かったのじゃろう。お隣さんとは,それ以降殆ど顔を合わすことはなかったそうじゃから,旦那の社交下手も困ったものじゃ。普通は何かお礼をするもんじゃろ。ま,わしらはそういうことは一切せんが・・・。 春さんには,カトリックのお説教や俳句の会などお友だちも多かったようじゃが,一人長田さんという春さんと同い年ぐらいの婆さんがおったそうじゃ。その方はただ近所に住んでいるというだけで,春さんの家での会合に参加していたかどうかは定かではないそうじゃが,春さんとお喋りしていて最後はいつも口論になっておったようじゃ。大らかで優しい春さんじゃったが,長田さんとはいい喧嘩友だちで,長田さんが帰ると春さんはいつも旦那に長田さんの悪口を言うとったのじゃ。長田さんはしばらく姿を見せなくなり,もう絶交したのかなと思うと,3,4日するとまた春さんを訪ねて来たのじゃ。そして,また同じことが繰り返される。時には,旦那も二人の会話に引きずり込まれることもあったようじゃ。長田さんも旦那のことをいい人だと思ったということじゃが,旦那はただ何も言わずニコニコして話を聞いていただけなのじゃ。沈黙は金なりか・・・。 この続きはまたの機会に・・・。じゃ・・・。 |